オンライン日本語講師のみなさん、学習者さんにJLPT受験対策の指導をなさっていますか。
今、私も12月の受験に向けて、N4 ひとり、N5 ふたり、来年の7月目標のN3ひとり指導しています。
実は あらためてですが、私の主人も外国人です。
母語はアラビア語です。膠着語である日本語と屈折語であるアラビア語、SOVの日本語、VSOのアラビア語 主人にとって日本語学習はかなりハードルが高いものです。
N5、N4までは順調でしたが、N3取得まで かなり合格まで時間がかかりました。
この度、主人が やっとN3に合格しました。
基本的に 夫婦関係が悪くなるので主人に日本語を教えることはありません。
日常会話でひどい間違いをすれば、言い直します。
家族に何かを教えることはしないようにしています。
子供が小さい時にも、英語は教えないようにしていました。
外部の講師や学校の先生にお任せしていました。
主人は日常会話ではそれほど困るわけではないです。
しかし、働きながらですから、勉強はもっぱら通勤電車の中でしていました。
主人のメインワークは 研究者です。論文も全て英語で書いています。
彼にとって、日本語は第3言語となります。
N3取得までは 明言しにくいほどの時間がかかりました。
彼の名誉のために、そこはあえて伏せておきます。
JLPT試験の合格点は 何点?
レベル別得点区分と得点の範囲 https://www.jlpt.jp/guideline/results.html
参照先:日本語能力試験JLPT公式サイト 国際交流基金 日本国際教育支援協会
日本語能力試験JLPT公式サイトからの引用です。詳細は リンクをご覧ください。
言語知識 | 読解 | 聴解 | ||||||
得点の範囲 | 総合得点 | 得点範囲 | 基準点 | 得点範囲 | 基準点 | 得点範囲 | 基準点 | |
N1 | 0~180点 | 100点 | 0~60点 | 19点 | 0~60点 | 19点 | 0~60点 | 19点 |
N2 | 0~180点 | 90点 | 0~60点 | 19点 | 0~60点 | 19点 | 0~60点 | 19点 |
N3 | 0~180点 | 95点 | 0~60点 | 19点 | 0~60点 | 19点 | 0~60点 | 19点 |
N4 | 0~180点 | 90点 | 0~120点 | 38点 | 0~60点 | 19点 | ||
N5 | 0~180点 | 80点 | 0~120点 | 38点 | 0~60点 | 19点 |
たとえば、N3の場合、総得点は180点(満点の場合)
95点以上とれば合格です。
しかし、各セクションごとに基準点があります。この基準点以上でなければいけません。
つまり言語知識(N3の場合は文字・語彙・文法)で、基準点の19点以上、読解で19点以上、聴解で19点以上を取る必要があります。
※総得点で、52%以上 各セクションごとの基準点をクリアすれば合格となります。
こう見れば、全体の約5割を取れば合格となります。
どうですか。これをどう考えますか。
みなさんが、ご存じの実用英語検定(英検)一次試験の合格は 正答率80%以上です。
英検と比較すれば、JLPTは かなり緩い試験と言えるかもしれません。
もちろん、JLPTには、スピーキングテストはありませんから、4技能ではなく3技能での判定となります。
実際の合格証書は これです。
オンライン講師の皆さんは、あまり見たことがないかもしれませんので、公開します。
いつからか知りませんが、新紙幣のように、ホログラムや透かしが施されています。
以前はありませんでした。
言語知識 31/60
読解 31/60
聴解 46/60 総合得点 108/180 コメントは差し控えておきます。(笑)
合格証書も 偽造されて、転売されているというニュースがありました。
ですから、偽造防止のためにホログラムや透かしを入れたのだと思います。
また、この合格証書は 別途申請しないともらえません。(一通 1000円です)
しかも、日本語教師が、日本語教育能力検定試験合格時にもらった合格証書とは違ってペラペラです。
普通のレポート用紙を三つ折りにしたものできます。
1000円も徴収するならば、もう少し上質の紙であるべきです。
JLPT試験を受験する目的はなんでしょうか?
これも、公式サイトに発表されています。
参照先:日本語能力試験JLPT公式サイト 国際交流基金 日本国際教育支援協会
日本での大学入学のため、就職のため、また就職、昇給のために必要なので、JLPT試験を受けるのです。
他にも帰化申請にもJLPTの合格証書は正式書類として申請書類に参考資料として添付できます。
つまり、日本人に帰化するためには、小学校3年生程度の読み書きレベルが必要とされています。
言い換えればN3を取得していれば、申請に有利になるからです。
このように、JLPT試験の結果は、日本人が考えているよりもずっと大きな影響力をもっていると言えます。
JLPT試験は 実際どのように行われているか
今まで、何度も主人のJLPT試験に付き合って、会場に行ったり、送り迎えをしてきました。
それまで、JLPT試験は 自分が受けたTOEICの試験や英検の試験のような厳格なものを想像していました。
日本語教師の皆さんが時々つぶやいておられますが、カンニングが横行しているんです。
主人の話によると、周りの人の解答用紙は丸見えの状態で、あきらかに友達同士で来ている人たちが見せ合っているのはいつものことだと。
日本語堪能な人がいて、意図的に自分の解答を見せているようだと。
試験官はいるのに? 試験官の数が絶対的に少ないのです。
チェックも本当にゆるいです。
以下の記事にもあるようにJLPTのN1、N2では優遇措置が与えられるために必要なのです。
また、日本で暮らす外国人、日本で働く外国人にとっては、N3、N4は重要なレベルです。
収入に直結したり、在留資格にも影響するからです。
そんな大きな力を持つJLPT試験なのに、カンニングが横行しているのです。
以下は 週刊SPA!の過去の記事よりの引用です。
’22年9月、岸田首相が海外から優秀な外国人材を受け入れるための制度拡充を表明。他の先進国同様、日本も高度外国人材の獲得に舵を切る方針を明らかにした。 その際の条件の一つとなるのが日本語能力試験(以下、JLPT)の成績である。 「活動内容に応じて項目ごとにポイントを設け、合計70点に達したらビザの延長や規制緩和などの優遇措置が与えられるのが高度外国人材制度。そこで、最上級の『N1』とそれに次ぐ『N2』保有者は特別に10~15点加算されます。日本企業への就職も有利になります」(外国人問題に詳しいジャーナリスト) 特にN1は「特定活動46号」(製造業、飲食業、コンビニなどでのフルタイム就労)資格取得には避けては通れない条件だ。
前出の学生によると、カンニングを斡旋する業者が存在し、WeChat(中国版LINE)で集客しているのだという。在日中国人向けのグループチャットを見せてもらうと、複数の中国人業者が「日本語能力試験・合格保証」と謳う広告を掲載していた。 そこで、記者が留学生を装い業者に接触すると、業者は手口を次のように説明した。 「試験会場では電子機器類はカバンにしまうことになっているが、スマートウオッチのベルト部分を外し、本体部分を手の中で握っておけば見つからない。試験開始から15分ほどで解答をスマートウオッチに送る。オススメはサイズが小さいApple Watchのシリーズ3だ。試験の数日前になったらビデオ電話で具体的な流れを説明する」 これは受験会場に送り込まれた協力者がカメラ機能つきガジェットで問題を撮影して外部に送信し、解答を返信していると考えられる。さらに費用については、全部で30万円。前金として15万円、合格後に15万円をWeChatペイで送金せよとのことだった。 業者は、実際に利用し合格した留学生たちから寄せられたとみられる感謝のメッセージなども複数公開しており、現在は12月に行われるJLPTに向け、合格保証を謳う宣伝を発信し続けている。
週刊SPA!編集部 バックナンバーより 引用
JLPT試験の試験会場の一例
なぜ、このようにカンニングが楽々と実行できるのか。
試験会場の設定や 試験の運営方法があまりにもずさんだからです。
今、私たちは名古屋に住んでいるので、今回の試験会場は名古屋市の中心部で、名古屋大学の近くの大学でした。
(ちなみに2022年に私が日本語教育能力検定試験を受けた会場は名古屋大学でした。
日本語教育能力検定試験も、会場は少ないですから。
名古屋は まだ幸運でした。)
今回は 名城大学で、街の中心部でしたから、車で送迎できたので、とても楽でした。
でも、2023年12月の試験会場は なんと中部国際空港(セントレア)横の国際展示場でした。
国際展示場です。
名古屋市内にたくさん大学があるのに、なんと、Aichi Sky Expo!
名古屋以外の方には、距離感がわかりにくいとおもうのですが、
ここです。市街地からは かなり遠い場所です。
どうやって、会場まで行ったか、
くり返しますが、私たちは 名古屋市の中心部に住んでおります。
バス、地下鉄、名鉄と乗り継いで 片道 1時間半
交通費 片道 ¥1670でした。(大人1人分)
往復だともちろん¥3340です。
受験料は ¥6500ですから、(現在受験料は一気に1000円上がって7500円です。)
これだけで ほぼ1万円の出費です。
現在は、受験料を値上げしているのですが、これだけの受験料を徴収しておきながら、どうして、もっと利便性のいい会場を確保できないのか、納得できません。
外国人就労者や、外国人学生にとって、1万円の出費はかなりの負担のはずです。
セントレアまでの電車は ほぼ名鉄だけ。
私たちは金山駅で名鉄に乗車したのですが、金山駅はホーム幅が本当に狭いです。
多くの外国人受験生でホームが溢れていました。
会場時間への最適な電車は一本だけだったからです。
おそらく、名鉄にもなんの情報ももたらされてなかったんだと思います。
セントレアまでは特急で行くんですが、1両目、2両目が特別車となっていて、特別車は別料金が必要です。しかし、なんのアナウンスもないので、受験生は1両目、2両目にも乗車していました。
警備員が1両目、2両目から出るように 怒号していたが、普段名鉄に乗車しない私たちもはじめは意味がわかりませんでした。
もちろん、JLPTのホームページには、主催者側からの情報は皆無。
最寄駅から、徒歩12分という一行があるのみでした。
電車は金山駅からセントレア駅までずっと、鮨詰め状態の中、外国人受験生は教科書を無理やり開いたり、友達同士で問題を出し合ったりしていました。
駅についてからも 会場への案内は 一切なし。
英検やTOEICを受験された方はご経験があると思いますが、駅から会場までこれでもかというほどの人がボードを持って誘導してくれますね。
そういう案内は一切なし。
私が確認したのは、駅にたった一人サインを持った方が。
しかもこの方が来た時間もかなり遅かったです。
私が主人と会場まで行って、駅に戻ってきた時に現れました。
もう、多くの受験生は 会場に行ってしまった後でした。(意味なし)
下の写真が、 試験会場です。
試験会場ですよ。しかもこのひとつの会場、ざっくりと計算しましたが、数百人規模。
主人と机と列で計算しました。(ほぼ1000人)
このひとつのホールを 試験官三人で運営していたそうです。
まだまだコロナだったため、IDとのチェックもマスクを着たまま、コートを着たまま。
会場が寒かったため、フードを被ったまま受験していたそうです。
こんな状態なら、替え玉受験は容易と思われます。
腕時計やスマホのチェックもなかったそうです。
この1ホールにトイレはたった1箇所。
別の場所のトイレは使用できないようになっていたそうです。
これで、カンニングを防げますか。
最終の枚数チェックにもかなりの時間がかかって、主人が会場からでてきたのは、テスト終了後50分以上たってからでした。
外国人なので、どこに文句を言えばいいのかもわかりませんよね。
JLPT試験が大きな影響力を持ち、企業や政府も公的なライセンスとして採用しているのならば、もっと設備の整った試験会場で、人員を増やして公明正大なテストであるべきだと思います。
N3レベルの学習者が N1,N2を取得したという話も日本語教師なら、聞いたことがあるのではないでしょうか。
それは、こんな試験会場の運営をしているからです。
聴解試験の時も うるさかったそうです。誰かが、答えを言ってそれを周りの人が書き込んでいたそうです。
試験官は何も注意しなかったそうです。
TOEICや英検のように、整然とした運営をしようと思えばできるはずなのに、しようとしないのは、どこが怠慢なのでしょうか。
合格証書の偽造売買、替え玉受験、カンニングの横行などわかって久しいのに、なんら対策をとらないのは、一生懸命試験のために勉強している学習者さんにとってマイナスでしかないです。
日本語教員の質 向上をうたって、国家資格にするのであれば、それに伴うJLPT試験の整備もおこなってほしいと 一介の日本語教師として切に願います。
私が参加している日本語教師コミュニティのあつこさんが、このトピックで動画を アップされています。
ノマドで生活し、実際にスペイン語検定を受験されているあつこさんの動画のリンクを貼っておきます。
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